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唯「いんせき!」 

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 18:44:33.25 ID:MYoI/9SjP
「ねぇ 唯は知ってる?」

「へ?なんのこと、和ちゃん?」

5月の夕方の

暑くもなく 寒くもない帰り道

久々に唯と一緒に並んで歩く

茜色の夕焼け空には 雲一つ無かった

「隕石が降ってくるんだって」

「えぇ!?」

「ち、地球に・・・!?大変だよぉ!」

大きく目を見開いてリアクションを取る

あなたホント話し甲斐があるのよね

「海外の研究で大きいのが見つかったらしいわよ」

「1年後にはひょっとしたら、ぶつかるかもって」


「ひょっとしたら・・?」

「うん、25,000分の1の確率だって」




5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 18:47:41.84 ID:MYoI/9SjP
「なぁんだそんなの当たりっこないよぉ!」

「まぁそうよね」

ホントかも怪しいし

考える事自体馬鹿馬鹿しいかもしれない

安心したこの子の顔

いつ見ても変わらないわね

「でも、もし当たるって分かったらどうする?」

「地球が一瞬で吹き飛ぶような大きさの隕石が」

唯は即答

「アイスをお腹一杯食べる!」

うん。予想はしてたけど





7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 18:50:22.40 ID:MYoI/9SjP
「和ちゃんならどうするの?」

「そうね・・」

「いつも通り過ごして、何事もなく死ぬわ」

唯は口をぽかんとあけて しばらく私の顔を眺める

魚みたいね

「どうしたのよ・・?」

「何もしないなんて勿体無いよぉ~!?」

「最後に悔いの無いようにぱぁーっと遊ばなくちゃっ」

腕を大きく広げて 笑顔で叫んだ

塀に止まっていたカラスが飛んでいく

「・・その辺りは人それぞれだろうね」




8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 18:52:36.22 ID:MYoI/9SjP
次の日

淡々と授業をこなし

しばしの憩いである昼休みの時間

いつも通り澪と一緒に昼食を食べる

「来週からテスト習慣だなぁ」

可愛らしいタコさんウィンナーを摘まみながら

澪は溜息をついた

「あら テストで澪が溜息つくなんて」

「部活が出来なくなるし、それに・・」

「唯が追試になるとまた廃部の危機になるんだよ・・」

もう一度溜息をつく

苦労してるのね





9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 18:54:48.56 ID:MYoI/9SjP

「あ、今日唯にテスト週間のこと伝えておかないと」

あの子は言わなきゃ気付かないままテスト受けちゃうもの

「大丈夫だよ。今年は憂ちゃんもいるし」

「・・それもそうね」

世話を焼く手間が減ったけど

なんだか少し寂しい感じもする





10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 18:56:58.67 ID:MYoI/9SjP
お互い弁当箱を空にして

話題の切れてきた頃

昨日の唯との会話を思い出す

「澪は知ってる?隕石の話」

澪はその単語を聞くと一瞬怯えた表情を見せる

「あ、あぁ この前ちょっとだけニュースでやってたの見たよ」

「に、25,000分の1って ありえないよなぁ!」

わかりやすいわね

「飛行機が事故に遭う確率が200,000分の1なんだって」

「それよりずっと高いのよ?」

まぁこんなのホントか知らないけど





11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 18:59:35.46 ID:MYoI/9SjP

午後の授業も終わり

未だに震えてる澪を部室まで送ってあげる

唯とはまた違う世話焼かせね

「さ、着いたわよ。いつまで怖がってるの・・?」

「い、いや・・まさか私でも・・い、隕石なんか、怖がらないって・・・」

私にはガタガタ震えてるように見えるけど・・


音楽室の扉が開いて

元気で呑気な声が聞こえてくる

「澪ちゃん、早く入りなよぉ・・」

「ってあれ、和ちゃん?」

「ちょっと澪をね」

唯は涙目の澪をちらりと見て事を理解できたらしい





13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 19:03:30.04 ID:MYoI/9SjP
「大丈夫だよ澪ちゃん!隕石なんて当たらないよぉ」

励ましてる唯を横目に、綺麗なカップに淹れられた紅茶を頂く

あのあとなんだかんだで

お茶を勧められちゃった

軽音部の練習風景は1年前から変わって無い様で

軽食部と言っても なんら差し支えはなさそうね

「ハハハ、隕石怖がるって相当なもんだな~」

「ぅ・・・ で、でも死んじゃうんだぞ!もし25,000分の1が起きたら!」

澪の激しい主張も律は笑い飛ばして

安心させるように言う

「いいか澪、そんなら交通事故や電車のホームから足踏み外したりする方がよっぽど危ないぜ?」

「そんな低確率に怯えてちゃ生きていけないぞっ」

「う、うん・・」





14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 19:06:05.40 ID:MYoI/9SjP
家に着いて

夕食を食べている最中、ふとテレビを見る

夕方のニュース番組

流行りのファッションについて都心の人間に取材をしたり

ゴミの不法投棄に怒る地主の声を紹介したり

至極どうでもいいような企画が続いていた

視線を卵焼きに戻し 口へ運ぼうとしたその時

ニュースキャスターが隕石の単語を口にする

『先日観測された巨大隕石は地球への衝突の可能性を含んでいるとされ・・・』

馬鹿馬鹿しい確率と言っておきながら気になってしまい

卵焼きを一旦小皿に置き画面に注目していると

『最新の研究では20,000分の1とも・・・』

どうやら地球の危機に一歩近づいたようだ





15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 19:10:24.25 ID:MYoI/9SjP
しかしその後

隕石関連の報道はめっきり減り

特に進展の無いまま

何時の間にか夏休みが終わっていた





16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 19:12:51.50 ID:MYoI/9SjP
「澪、それ どうしたの?」

昼休み

澪の付けていた携帯電話のストラップを

少し無作法ながらも箸で指差す

「あぁ、合宿行った帰りに買ってみたんだ」

「夏の思い出らしくていいかなって・・」

小さな巻貝のストラップ

控え目ながらも澪らしいかもね

「貝殻って綺麗だよね。これが生き物の一部だったっていうのも素敵だよ」

「セミの抜け殻もそんな感じよね」

澪が呆れたような顔で私を見る





17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 19:15:18.22 ID:MYoI/9SjP
「い、いや あんなグロテスクなものと一緒にされちゃ・・」

「そう?同じだと思うよ」

「見た目だけで差別されるけど、命が宿っていたっていう意味では」

「そうかもしれないけど・・・」

澪は弁当に目を向けると 少し眉をしかめる

あら 食事中は不味かったかしら




その日の帰り道

電信柱に止まっているセミの抜け殻を見付けた

手にとって ほんの少し力を加えただけで

パキリと砕ける

頭上ではまだ生き残ったセミ達がけたたましく

最期が来るまで合唱していた





18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 19:19:31.14 ID:MYoI/9SjP
数日後

唯が顔色を変えて話しかけてくる

朝から忙しい子ね

「の、和ちゃん!今日のニュース見た!?」

「最近テレビの調子悪くて見れてないんだけど・・どうしたの?」

「速報でね、隕石の当たる確率、500分の1なんだって!」

隕石

すっかり忘れていたその単語

そして前回の数十倍の確率

唯も顔色変えるわけだわ

「突然ね」

「大変だよぉ 前よりずっと高いんだよ!?」

「そうね。当たるかもしれないわよ」





19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 19:22:09.73 ID:MYoI/9SjP

「落ち着いてるね和ちゃん・・」

「騒いでも変わらないし、まだホントか分からないじゃない」

全部鵜呑みにするわけにもいかないわよね

「そ、そうだよね!えーと500分の1っていうと・・」

唯は頭を傾げながら

うんうん唸って500分の1の事象を考える

私もパッとは浮かばない

まぁ浮かんだところで 比べる意味なんてないんだけど


教室に着くと

部屋中その話題でもちきりになっていた

これは澪がマズいんじゃないかしら





21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 19:27:11.61 ID:MYoI/9SjP
「の、和ぁ・・・」

案の定涙目の澪が抱きついてくる

以前の何倍も怖がってるわけね

「大丈夫。あんなの嘘っぱちよ」

「でも、でもニュースで・・・」

「騒がせたいだけなのよ、マスコミっていうのは」

とりあえず安心させるために適当なことを言っておく

一度こうなると手に負えないんだから

「いい?たとえ隕石衝突の確率がわかってても、それを政府が発表すると思う?」

「大騒ぎになるだけよ。助からない大きさなら尚更」

澪が子犬のような目で見つめている

もうひと押し

「こんなのガセネタよ。何カ月も前から途切れてたニュースが今更なんて・・」

さ、泣きやんで頂戴





22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 19:31:53.01 ID:MYoI/9SjP
澪は目に涙を溜めたまま

弱々しく口を開く

「ホント・・?」

「かもしれないわね」

どうも腑に落ちないという顔をしながらも

とりあえず落ち着いてくれた

「さ、授業始まるわよ」



教室はいつもの数倍騒がしい

どの生徒も 冗談混じりに話しているようだ

澪の周りの空気だけ 

本気の暗さが漂っていた





26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 19:36:11.28 ID:MYoI/9SjP
律がまたしても書類を提出してないので

この日の放課後は部活に催促せねばならない

なんで毎回しっかりと忘れるのかしら

「律、また出し忘れてるでしょ!?」

お菓子の並んだ机を囲んで

呑気に紅茶を啜っていた軽音部員達が

一斉に私に目を向ける

「あちゃー・・すっかり忘れてた・・」

目を丸くして驚く律は

またすぐケーキを頬ばり始めた

まったく反省してないわね・・

「律先輩って確実に不手際残しますよね」

「ぅ・・いつも机に入れっぱなしにしちゃうんだよなぁ」





29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 19:39:17.15 ID:MYoI/9SjP
書類を急いで書かせて とりあえずの仕事を終える

その後いつもの唯の一言

「和ちゃんも食べていきなよぉ」

「まぁ今日はもうすることないし、構わないけど・・」

席に着き、紅茶を手にしたその時

律が元気よく話しかけてきた

「なぁなぁ隕石の話聞いたか!?」

「朝唯から聞いたわ。500分の1らしいね」

0,2%

無きにしも非ず

「あり得ないよなぁ~ 500個飛んできて1個しか当たらないんだぜ?」

律はなんの心配もしてないようだ

楽観的だけど まぁこんなものよね

「澪はひどく怯えてるけどさ、こんなの平気だって!」

澪の方をちらりと見ながら、慰めるように言う





31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 19:43:55.20 ID:MYoI/9SjP
「私は当たると思いますよ」

「あずにゃん?」

たった一人の一年生は無表情のまま

静かにぽつりと呟いた

「こういう危険な低確率って みんなが祈れば祈る程当たりやすくなるものです」

マーフィーの法則ってやつかしら

「えぇ~ じゃあ当たるようにってお祈りしないとねっ」

「それはそれでどうかと思うぞ・・」

律は呆れながら答える

でも世の中そう祈る人もいるのよね

「ムギちゃんは当たると思う?」

唯が目をキラキラさせて尋ねる

なんでこんな楽しそうなのかしら・・・





32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 19:48:12.24 ID:MYoI/9SjP

「大丈夫だと思うけど・・・」

「もし、当たることになったら 最後までお祈りしてると思うなぁ」

「そうしたら、きっと助かる気がするの」

ロマンチストね

「でも祈ったら当たりますよ」

「手厳しいなオイ・・」





33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 19:52:09.60 ID:MYoI/9SjP
そんな彼女らの姿を見ていたら

何故か心の底から笑みがこぼれてた

「どうしたの和ちゃん?」

「うぅん、何でもないの」

ただ隕石の話してるだけなのに

こんなに楽しいって

素敵ね 軽音部は





34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 19:54:57.59 ID:MYoI/9SjP
気が付けば日も沈み

帰り道はすっかり暗くなっている

星が綺麗だなぁ って空を見ていたら

流れ星を1つ見つけた

当たりませんように

なんて願い事はしなかった






家の玄関に置いてある

蟻の駆除装置

餌に毒が入っていて 巣に持ち帰ると仲間もまとめて殺す

結構残酷な仕組みだと思う

餌を見付けた時点で

殺してあげるだけじゃ

ダメなのよね・・





37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 20:00:01.26 ID:MYoI/9SjP
何時の間にやら年が明け

桜の舞い散る季節がやってくる

決して高くもなくあり得なくもない

500分の1という数字は

地味に世の中を変えていた

沸いて出たような宗教団体が終末論をばら撒き

仕事や社会活動をやめようと勧誘する者達も現れる

犯罪率だって上がるかもしれない

けれど、所詮は0,2%

真偽も定かじゃない情報

大きな変化は見られなかった




突然の続報

衝突確率100%が知らされるまでは





39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 20:02:44.48 ID:MYoI/9SjP

「学校、行かなくてよくなるんだってね・・」

春の暖かい空気と

草の香りが気持ちいい通学路で

唯が暗い顔で話し出す

「ホントに降ってくるんだよね・・」

「そうみたいね」

「降ってきたら、みんな死んじゃうんだよね・・」

「うん」

気が付けば泣きながら話している唯に

1年前の元気は感じられない

「今日が最後の登校日だから、思いっきり練習してらっしゃい」

「うん・・」

小鳥の可愛いさえずりを聞きながら

私は残り僅かの人生をどう過ごすか考える





41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 20:06:51.79 ID:MYoI/9SjP
学校に着いても

生徒も教師も殆どいない

律儀に来たのが馬鹿馬鹿しいわね


机に教科書を出していても

授業が始まるとも思えず

音楽室へ行ってみる





42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 20:09:25.63 ID:MYoI/9SjP
いつも活気に満ちていた音楽室も

いまや絶望の香りに満ちている

軽音部員は全員集合して

お馴染みのティータイムを嗜んでいるが

そこに笑顔は無い

「随分静かな音楽室ね」

「和ちゃん・・・・」

唯は今朝の顔のまま

机の上のケーキに手を付けていない

あなたらしくもないじゃない

「和、なんだか大変なことになってるなぁ!」

律が明るく話しかけてきた

けれど、目は笑っていない

「当たるわけないよな・・死んだりなんて・・・」

「・・世界中の科学者がみんな計算ミスしてて、外れるかもしれないわね」





44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 20:12:08.05 ID:MYoI/9SjP
無理してるけど

あくまで信じたくないみたい

「ほら、澪も!元気出せって!」

「・・・・・」

泣き疲れてぐったりしてる澪がいた

もう出せる涙は出しつくした様子で

窓から外を眺めている

「隕石なんてミサイルでぶっ壊せるんだぞ!大丈夫だって・・!」

「大丈夫だって・・・」

そんな規模じゃないのは

あなたもわかっているのよね

「うん・・」

「ありがとうな、律・・」





45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 20:15:48.41 ID:MYoI/9SjP
紬はずっと空にお祈りしてる

「助かるわよね・・・お祈りしてれば・・?」

そんな姿を横目に

梓は無表情でギターをいじっていた




みんなの有り様

それぞれ信じたいものを信じて

諦めるものは諦めている



私がいても何も変わらないので

今日は帰ることにしたわ

もう会わないかもしれない





46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 20:19:53.22 ID:MYoI/9SjP



しばらく経った

何も特別なことはせず

家で家事手伝いをしながら過ごしてた

少し気分転換に散歩をしたり

唯とどうでもいい雑談をしたり




ぶつかる日時はとっくの前から

秒単位ではっきりわかってる

日本時間で明日の午後4時24分55秒


突然我が家のチャイムが鳴らされ

扉を開けてみると

唯がいた





49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 20:23:39.29 ID:MYoI/9SjP
「どうしたの?明日まで、後悔無いように過ごしてる?」

「うぅ・・後悔だらけだよぉ・・」

「まぁ 思い通りにはいかないでしょうね・・・」

涙は流れていない

以前よりか少しは目が明るくなっていた

「お父さんとお母さんがね・・帰ってきたよ・・」

「よかったじゃない」

何度も聞いた話

「憂がね・・いっぱい・・・」

「持ち切れないくらいのアイス買ってきてくれて・・・」

「優しいもんね、憂ちゃんは」

最近唯はいつも同じ話をしてくれる

「今日は、和ちゃんにお礼をしにきたんだよ・・」

「お礼?」

「今まで迷惑ばっかりかけてきたから お礼をしなきゃって・・・」





52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 20:28:01.32 ID:MYoI/9SjP
唯が私に手渡したのは

綺麗な貝殻の飾り物だった

生命の輝きと言わんばかりに

ピカピカ輝いている

「いいのに そんな気を使わなくても・・」

そうは言っても嬉しいわ



唯が少し強い目になって

今度は私に尋ねてくる

「なんで和ちゃんは、そんな平気でいられるの?」

「私は・・」

なんでだろう

まともに考えたこともなかった





53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 20:30:20.88 ID:MYoI/9SjP
「澪ちゃんも、ムギちゃんも、みんなすっごい哀しいのに」

「和ちゃんはいつもおなじ顔でいられて・・・」

「なんでだろうね・・」

少し考えてみると

あっさり答えが出てくる

「多分、今の人生に満足してるもの」





54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 20:32:58.93 ID:MYoI/9SjP
「えぇ、じゃあ哀しいよ?終わっちゃうんだよ?」

唯は本気で理解不能という顔で

私を心配そうに見つめる

「終わらせたいのよ」

「ほぇ?」

「一番幸せな時にあっさり死ねるなんて、それこそ世界一の幸せ者だと思わない?」

「・・・・」


唯の言ってた

最期に悔いの無いようにするっていうのと

近い部分があると思うんだけどね





56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 20:38:34.35 ID:MYoI/9SjP
あ、そうそうこれだけは

これだけは何があっても言っておかないと

「それより唯、軽音部の最後のライヴはしてないの?」


「え・・?」

ポカンと口をあける唯

魚みたいね

「どうせいざこざあってから一度も合わせてないんでしょ?」

「いい、唯?」

「悔い無く死にたいなら・・」





57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 20:41:13.62 ID:MYoI/9SjP
最後の朝

まだ日の昇る前から

誰もいない通学路を歩く

校門には立ち入り禁止の看板が張り付いていて

遠慮なく乗り越えていく

生徒会長が見たらなんて言うだろう


屋上に上がって

空を見る為寝転がりながら

人生を終えようと決めた





58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 20:44:29.22 ID:MYoI/9SjP
地球最後の朝焼けは

これまで見てきたどの空よりも美しかった

ひたすら幸せだった


唯から貰った貝殻を

太陽にかざしてみる

素敵だから 夕方までずっとこうしてよう





60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 20:51:17.69 ID:MYoI/9SjP
この光

抜け殻なのに こんなに綺麗

握っても壊れない

セミじゃあこうはいかないだろう

やっぱりセミよりも

貝の方が素敵かもね、澪







日も暮れてきて

携帯電話の時計を見る

午後4時ちょうど

いつもなら授業が終わる頃合ね





63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/26(火) 20:57:24.26 ID:MYoI/9SjP




音楽が聴こえる

いつも放課後 音楽室から流れてきた曲だ

演奏者が ホントに楽しんでるのがわかる

そんな素敵なメロディー

上手になったよね、唯


これを聴きながらなんて

幸せ意外の何物でもないじゃない




時計が24分を示す

私は空を眺めながら

光に包まれる


おわり





87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/27(水) 02:00:44.09 ID:RBC4Ux+RO
和の時代が来た






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[ 2010/02/22 12:00 ] けいおん!SS | TB(0) | CM(13) | このエントリーを含むはてなブックマーク


これ何度みても鬱になるわ
いい話だけど
[ 2010/02/22 12:41 ] [ 編集 ]


面白かった和目線ってめずらしいな
[ 2010/02/22 15:02 ] [ 編集 ]


うわあおう
こういう終末系の話に弱いんだよ俺
[ 2010/02/22 16:03 ] [ 編集 ]


これはやばい。
鳥肌立った
[ 2010/02/22 16:34 ] [ 編集 ]


伊坂幸太郎の終末のフールっぽい
[ 2010/02/22 16:58 ] [ 編集 ]


和のキャラソン聞きながら読んでたら
何とも不思議な気持ちになった
[ 2010/02/22 23:00 ] [ 編集 ]


これ和ちゃんのショート・スピンオフ作品としてOVA化してほしい。監督は新海誠で。ビューティフル終末系
[ 2010/02/23 04:59 ] [ 編集 ]


夢オチでないのが悔やまれる
[ 2010/02/23 22:31 ] [ 編集 ]


終末の過ごし方。
[ 2010/02/24 19:52 ] [ 編集 ]


すごい面白い!!
作者に感謝!!
[ 2010/03/29 07:10 ] [ 編集 ]


今まで読んだ週末系の中で一番清々しく読みおわった。
とても良い。

SS速報でリンク張ってくれた人サンクス。
[ 2010/11/05 03:22 ] [ 編集 ]


(´;ω;`)
[ 2010/11/07 03:06 ] [ 編集 ]


和ちゃん、それ本気で言ってるの?
[ 2010/11/07 18:43 ] [ 編集 ]
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けいおん系SSばっかりです。


ひさびさに左上更新してみましたw


とはいえ特に書く事もありませんが(笑)


このブログも開設から1年以上経過するんですね…


とりあえず「けいおん!!」のアニメが終わるまでは頑張って更新し続けたいと思います
2010年7月24日


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