闇速

けいおん!系SSを中心に、2ちゃんねるからSSスレを独断と偏見でまとめてます。
最新ニュース

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。




この記事をリンクする?:


[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-) | このエントリーを含むはてなブックマーク

唯「四畳半!!」  

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 09:35:22.28 ID:6jDkYyDc0
四畳半神話体系とけいおんのSSです
原作そのままの文章とかあるんでそこは大目に見てください





2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 09:37:11.71 ID:6jDkYyDc0
唯「先パ~イ、ちゃんと歩いてくださいよぅ~」

 隣で心配そうに、かつ重たそうに私の体を支える平沢さんの言葉が聞こえた。
 どうやら私はひどく酔っ払っていたらしい。

明石「今日は先輩にしては珍しく飲みすぎたようですね」

 さらに隣にはどうやら明石さんが居るようだ。
 私は体の両側をうら若き乙女2人に寄り添われ、情けなさと少しの嬉しさを一瞬感じた。
 しかし、それでもなお体の内側から湧き出る気持ち悪さと必死に格闘していた私はそれどころではなかった。

唯「先輩の家ってドコなの~?」

明石「樋口師匠の真下の部屋と聞きました。せっかくなので送って行きましょう」









4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 09:38:23.70 ID:6jDkYyDc0




唯「到着~。お、鍵あいてる」ガチャ

明石「不用心ですね・・・。でも部屋はわりときれいにしてあ・・・・」

明石「!!」

唯「どったの? 明石さんも先輩運ぶの手伝って~」ヨイショ

明石「蛾は苦手なんです」

唯「あ、ホントだこんなところに。 えいっ!」パンッ

明石「お見事です」

唯「へへーん」

 平沢さん、それは私の本・・・っ








5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 09:39:04.45 ID:6jDkYyDc0

 大学入学当初から2年と少し、3回生になっても未だに女性を経験したことのなかった我が四畳半の空間に今宵、
 このような形で2人もの乙女を招き入れるとはいったい誰が予想したであろうか。
 正確には私が招き入れたわけではなく、事実このようなシチュエーションを妄想しなかったわけではないが、
 私の理想とするシチュエーションはより高みにあった。
 あまりに理想が高いため、妄想上の私が見下ろす現実の私は足元を這う蟻より小さく見えるときもあった。
 むしろ蟻のほうが必死に働く分いくらかましである。

 ここ最近ではもはや小津くらいしか私の部屋を訪れる者はいなかったが、それでも常に部屋を整理し、
 掃除を怠らなかったのはひとえに私が日ごろ自分自身について真剣に考えているからに他ならない。
 裏を返せば暇を持て余していたのである。

明石「おじゃまします」

唯「どうぞ~」

 平沢さん、それは私の台詞・・・。









6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 09:39:37.41 ID:6jDkYyDc0
唯「先パ~イ、お水ですよ~」

私「・・・ありがとう。 今日はいろいろすまん」

唯「そんな、気にしないでいいですってば~」デレッ

 初めて私が平沢唯と出会ったのは一年ほど前、大学二回生の春である。
 当時、バンドサークル「ふわふわ」に所属していた私は既にサークルの輪から孤立していた。
 サークル「ふわふわ」はその名が示す通り、恋に揺れるマシュマロのようにふわふわとしていた。
 先輩も後輩もない、憎しみや悲しみもない、みんな常にニコニコと微笑み、やさしく語り、口論もせず、猥談もしない。
 私が何か言うと、みんな優しい微笑みを顔に張り付けたまま黙り込んでしまう。
 こうしてサークルにも馴染めず、元から音楽の成績など超絶低空飛行であったため
 肝心の楽器も一向に上達しなかった私はただ漠然と不満を垂れ流しながら日々を過ごしていた。
 
 そんな中、新入生としてサークルに入ってきた平沢唯は積極的に私に話しかけてきてくれ、
 そのあどけない可愛らしさと天然ぶりは私のハートをDOKI☆DOKIさせるに充分であった。








7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 09:40:54.77 ID:6jDkYyDc0
唯「わたし、実はほかの大学のコとバンド組んでるんですよ~
  今度ライブハウスで演奏するんで、よかったら見に来てください!」

 こう言って渡されたチケットを手に、初めてライブハウスというものに足を踏み入れた。
 彼女のバンド「放課後ティータイム」は、そのふわふわしたバンド名とは裏腹に
 実に技術力のある、完成度の高い演奏を披露した。 人は見かけによらないものだ。

 それ以上に、彼女たちは狭苦しいライブハウスであらん限りの楽しさを発散させ、観客たちに押し付けるのであった。
 驚いたことに観客たちはそれに押しつぶされることを露ほども拒まない。
 そして押しつぶされた暁には彼女らのことをもっと知りたいと思うのが大方の意見だろう。
 かくして私は平沢唯とその他のメンバーとそれなりに交流し、特に何もないまま今に至る。








8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 09:42:07.62 ID:6jDkYyDc0

明石「それでは、明日早いのでこれで失礼します」

 私は体の奥で巨大に渦まく吐き気に抗いながら、精一杯の感謝の意と非礼を詫びた。

明石「気にしないでください。では」バタン

唯「相変わらずクールぅ」

 あれは一年前、どこぞの古本市だった。
 私は家が近いというのもあって、連日のごとく通っていたのである。
 その古本市で明石さんに会った。
 それ以来特に音沙汰はなかったのだが、なんでも平沢さんの友達であり、
 樋口師匠の弟子ということで小津の知り合いでもあるという。
 
 彼女は万事手回しが良く、知的で何も寄せ付けぬオーラを漂わせている。
 その凍てつくような目線は無類である。









9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 09:42:37.78 ID:6jDkYyDc0

唯「先輩、気分良くなりましたか~?」
唯「吐きたくなったら言ってくださいね」

 いかなる理由で平沢さんはこのようなむさ苦しい四畳半の空間でべろべろに酔った
 真面目で理知的で紳士的なだけが取り柄の男をこうまで介抱してくれるのだろうか。
 紳士である私は、もしや惚れているのでは、などという安直な思考はせず
 おもむろに彼女と私の関係を分析したが、終始妄想に時間を費やしたのは言うまでもない。

私「もうだいぶ気分も良くなってきたから、平沢さんもそろそろ帰ったほうがいい。
  いろいろ世話になってありがとう。 今度何かお礼をさせてもらうよ」

唯「本当ですか!? じゃあ私ケーキが食べたいです♪」

 特に遠慮もなく堂々とケーキをねだってくる彼女の、無邪気な顔に癒されながら返事をした。

私「ケーキでもなんでも買ってやるさ」

唯「やったー♪ 先輩じゃあね~」バタン

 天使である。











16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 09:51:43.08 ID:6jDkYyDc0

 翌日、小津が訪ねてきた。

小津「なんでも昨日、あなた明石さんと平沢さんを家へ招いたらしいじゃないですか」

私「なぜお前がそんなことを知っている」

小津「私の情報収集能力を馬鹿にしてもらっては困ります。
   あなたのことだって、あなたの恋人よりも知っているんです」

私「俺に恋人なんかおらん」

小津「ま、万が一の話です」

 大学入学から数カ月、バンドサークル「ふわふわ」の腹立たしいほど和気藹藹とした雰囲気になかなか馴染むことができず、
 理想と現実の狭間で挫けかけていたころ、ふと片隅の暗がりに目をやると
 ひどく縁起の悪そうな顔をした不気味な男が立っていた。
 それが小津との出会いである。
 他人の不幸で飯が3杯食える、およそ誉めるべきところが一つもない唾棄すべき私の友人であり、
 彼に出会わなければきっと私の魂は清らかであっただろう。









17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 09:53:04.27 ID:6jDkYyDc0
私「それで、何の用だ」

小津「実は樋口師匠への貢物でまたえらいものを手に入れなきゃイカンのです。
   それをあなたに手伝ってほしいんですよ」

 樋口師匠とは、小津が弟子入りしている何やら胡散臭い人物である。
 師匠の部屋は私の部屋の真上にあり、そのせいもあって小津は頻繁に私の部屋を訪ねてくるのであった。

私「バカバカしい。なぜ私がそんなことを手伝わなきゃならんのだ」

小津「まあまあ、あなたもどうせ暇なんでしょう?
   今まで食って寝るしか能のなかったあなたが、やっと人様の役に立つときがきたんじゃありませんか」

私「うるさい。 黙らないとぶち殺すぞ」

小津「ぶって、しかも殺すなんて、あなた。ひどいことをおっしゃる」
小津「それに今回は協力してくれればそれなりのお礼は差し上げますから」

 小津が素直にお礼をするとは到底思えなかったが、私は仕方なく手伝うことにした。








18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 09:53:53.99 ID:6jDkYyDc0

 小津の話によると、師匠はビンテージのギターをどうしても手に入れたいので
 小津や明石さんに探してもらっているということらしい。

私「そんなもん楽器屋でそれっぽいギターを買ってくればいいじゃないか」

小津「あなたは師匠という人をまるでわかってない。それで済むなら苦労しませんよ」

 同じ下宿の真上に住んでいるということもあって、ちょくちょく樋口師匠なる人物を見かけることがあるが
 毎回同じ紺色の浴衣を着て下駄をカラカラと履いている妙な風体をしていた。
 ギターをたしなむ風には見えなかったが、仙人のように達観した眼で過去幾人もの手を渡った
 歴史あるビンテージギターを悠然と眺めている様子は意外にも容易に想像できた。
 そしてすぐ飽きてまた別の無理難題を要求する様子も容易に想像できた。

 私は安く手に入れられるビンテージギターなどあてがなかったため、はなから諦めていた。
 まあツイていればいつか手に入るだろう、程度の軽い認識であったが、私がそのような幸運に
 最後に巡り合ったのはいつだったか思い出すにつけ、期待は到底出来なかった。










20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 09:55:17.36 ID:6jDkYyDc0

私「・・・ということを小津から聞いてね。
そもそも安く手に入ったらビンテージじゃないような気もするが、
  誰かから譲り受けるということもある。気長に待つよ」

 私は優雅に紅茶をすすり、四方八方どんなにアクロバティックな角度から見ても
 阿呆面に見えない知的な雰囲気を漂わせながらいきさつを語った。

澪「へー、先輩もいろいろ大変なんですね」

律「そうだ!唯のギー太なら師匠って人も喜ぶんじゃない?いい具合に汚れてるし」

唯「ぶー。ギー太は私と一生涯を共にするって誓ったのー!」

梓「でもよく見たら結構痛んでますよ、そのギター。
  唯先輩最近ちゃんと手入れしてますか?」

唯「・・・してない」テヘッ

梓(だろうと思った)

紬「先輩、お茶おかわりどうですか~?」

 今や放課後ティータイムのメンバーと他愛無いおしゃべりが私にとって唯一心のオアシスであった。
 彼女らのライブが終わった後、毎回のようにこうして一緒にお茶を飲んでいる。










22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 09:56:34.07 ID:6jDkYyDc0

唯「師匠ってば最近はそんな無茶なこと言ってるんだ~
  明石さんも私みたいに自主破門すればいいのに」

律「え!?唯もしかしてその師匠とかの弟子だったのか!?」

唯「あれ、言ってなかったっけ?
  1年のころ、ふらふら~っと歩いてたら声かけられてね、面白そうだったから弟子入りしたの」

唯「でも途中で飽きちゃって、何カ月か行かなくなったら破門になっちゃった」アハハー

 私も初耳だったが、平沢さんと明石さんが知り合ったのもおそらくその時であろう。

律「なんだ~、唯の大学ってなんか変わった人が多いんだな」

 その変わった人の中に私も含まれているのだろうか。










24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 09:57:17.55 ID:6jDkYyDc0
私「今日は君たちに差し入れを持ってきたんだが、よかったら食べてくれ」

 私は以前平沢さんに世話になったお礼に、自分の限りある収入とにらみ合い、相談し、
 時には無理をして絞り取った予算からできるだけ高級なケーキをプレゼントした。

唯「おお~! 先輩ありがと~! いっただっきまーす」パクッ

澪「いいんですか?こんな高そうなケーキいただいちゃって・・・」

私「このあいだ平沢さんがいろいろ世話してくれてね。そのお礼だよ。」

律「唯が誰かの面倒をみるなんて珍しいな」

澪「ほんと、高校のときは憂ちゃんに世話してもらってばかりだったのに
  大学生になってずいぶん大人になったよな」

唯「もっと誉めて~」デレッ







25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 09:57:52.78 ID:6jDkYyDc0
梓「話を元に戻しますけど、古そうなギターだったら確か高校の音楽室の倉庫にありませんでしたっけ?」

紬「そういえばギターケースらしきものがあったかしら・・・」

澪「それって確かさわこ先生のギターじゃなかったか?
  大掃除したときに出てきたけど、結局そのまましまっておいた気が」

律「それだ!今日は久しぶりに我らが母校、桜が丘高校に赴き
  闇に葬らし血塗られた歴史の権化たるさわちゃんギターをいざ取り返さん!」

梓「なに一人で盛り上がってるんですか」

唯「わぁ~行きたい行きたい!みんなで遊びに行こうよー」

紬「確かに、あんまり近いから卒業してからもわざわざ遊びに行くことなかったものね」

澪「たまにはいいか」

 私もその流れにさりげなく乗りたかったが、一人男で女子高に入るわけにもいかず
 今日のお茶会はこれにて終了となった。









29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 10:01:06.11 ID:6jDkYyDc0
唯「さわちゃん先生いますかー?」

さわこ「はーい・・・ってあら、ひさしぶりじゃない」

澪「ご無沙汰してます」

紬「遊びに来ました~」

律「さわちゃん1年ぶりなのにリアクションうすーい」ブーブー

さわこ「そんなことないわよ。ちょっとビックリしたけど」

唯「さわちゃ~ん、会いたがったよ゛~」グジュグジュ

梓「こっちはリアクション過剰ですね・・」










31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 10:02:30.59 ID:6jDkYyDc0
律「梓から聞いたけど、今年はけいおん部は人がいなくて廃部になっちゃったんだって?」

さわこ「そうなのよ・・あなたたちが卒業してからというものムギちゃんのお菓子が食べられなくて
    けっこう寂しかったんだから」

澪(そこは私たちが居なくなったことを寂しがってほしい)

唯「音楽室って今誰か使ってるんですか?」

さわこ「だれも使ってないわ。 あなたたちが卒業してからずっとあのままよ」

律「よーし、部室へ向かうぞー!みんなついてこーい!」

さわこ「こらこら待ちなさい。鍵掛かってるから私も行くわ」








32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 10:04:18.58 ID:6jDkYyDc0
―――音楽室

律「うひょーなんも変わってないな~」

澪「懐かしいな。よく考えたら高校3年間ここにいた想い出ばっかりだ」

紬「でも私のティーセットは卒業するときに持って帰っちゃったから、少しさみしいわね」

唯「あ、でも倉庫の中はいろいろ残ってるよ!」

梓「先輩たちの私物も若干残ってます・・・てかほとんど唯先輩のじゃないですか!」

唯「私がここにいた証だね!」キリッ

さわこ「まあそれはいいとして、何か探し物があったんじゃないの?」

律「そうそう、たしかこの辺に・・・あった!」

梓「すっごい埃まみれです」ケホッ








33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 10:05:35.36 ID:6jDkYyDc0
さわこ「あら、それ昔私が使ってたギターじゃない。
    こんなところに置いてあったのね」

唯「実は大学の先輩がね・・・カクカクシカジカでこういうの探してるんだって。
  これってビンテージギターなのかなぁ?」

澪「見た感じやっぱり古そうだけど」

さわこ「(カビ臭っ)・・・いいわ、私ももうギターは弾かないしその先輩の所に持って行ってあげたら?」

唯「ありがとーさわちゃんせんせ~」

澪「目的のギターも有り難く譲ってもらったし、そろそろおいとましようか」

紬「そうね。さわこ先生今日はどうもありがとうございました」

さわこ「また遊びにいらっしゃい」








40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:19:16.97 ID:6jDkYyDc0
―――帰り道

唯「お~も~い~」

律「じゃんけん3連敗は唯の責任だろ~」

紬「唯ちゃん頑張って。もう少しで交代よ」

澪「なんか前もこんなことなかった?」

梓「気のせいですよ。デジャヴです」








41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:20:26.93 ID:6jDkYyDc0
 場面は変わり平沢さんたちが母校へ赴いてから翌々日。
 私は午前中に講義を終え愛すべき我が四畳半の自宅への
 最短ルートを計算していたとき、不意に携帯が鳴った。

私「(平沢さんから・・?)はい、もしもし」

唯『あ、先輩~!例のギター手に入れたんですけど、どうすればいいですか~?』

 なんと彼女たちがわざわざ私のためにギターを貰ってきてくれたとは。
 不覚にも顔の、特に口元あたりの筋肉が弛緩し恥ずかしくも一瞬ニヤケたが
 常人が認識できる速度より早く品のあるすがすがしい元の顔に戻した。
 残像である。

私「そうか。わざわざありがとう。私の部屋にまで持って来てもらうのも申し訳ないから
  君の家まで取りに行きたいが、どうだろう?」

 私は自然に、さりげなく、あくまで平沢さんにギターを運ばせるに忍びないという
 面持ちの口調で話した。決して女性の家へあがりこんで1杯お茶をいただくとか、
 楽しくキャッキャとおしゃべりしようなどとは露ほども考えていない。









42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:21:37.88 ID:6jDkYyDc0
唯『わかりました~!私まだ授業があるので、終わったらまた連絡します!』

 すんなりと返事をされ、静かに電話を切ったあと、私は大学構内をゆっくりと歩いた。
 これから平沢さんの家へ行く。一般的な大学生活を満喫しているそこらの不純な男女を尻目に
 私は妄想を爆発させながらひたすら歩きまわっていた。
 このときの私を第3者目線で見たとき、いかに挙動不審で怪しい人物であったかは想像に難くない。

唯『授業終わったので、大学前のバス停に来てくださ~い』

 バス停にはすでに平沢さんの姿があった。

唯「私実家から通ってるんで、ちょっと時間かかっちゃうんですけど大丈夫ですか?」

私「全く問題ない」

 いつもより言葉少なに受け答えする私をよそに
 平沢さんはいつも通り楽しそうにバスの到着を待っている。

唯「それじゃーしゅっぱーつ!」








43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:22:58.44 ID:6jDkYyDc0
 平沢さんが実家から通っているということで私はますます緊張してしまったが、
 聞くところによると今日はご両親が家におらず、妹もまだ学校に行っているという話であった。
 私の妄想がさらに加速したのは言うまでもない。

 平沢さんの自宅まではバス、電車を乗り継いで行きおよそ40分ほどで着いた。
 その40分の間、私と平沢さんは他愛のない話で盛り上がり、何の問題もなく目的地に着いたことに
 我ながら自分自身を誉めたくなった。

唯「どうぞーあがってくださいましー」

私「おじゃまいたします」

 バタン、ドタドタ
 
憂「あ、おねえちゃんおかえり!そちらはお客さん?」

唯「ほえ?憂、大学は?」

憂「私は今日授業ないよ。おねえちゃん忘れてたの?」









44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:23:59.93 ID:6jDkYyDc0
 どうやら平沢さんの勘違いで、妹の憂ちゃんは家にいるようだ。
 2人きりで平沢さん宅にいることを前提とした見苦しい妄想は憂ちゃんにより
 またたく間にかき消されたが、私はむしろホッとした。

唯「今日は先輩がギターを取りに来てくれたんだよ」

憂「いつも姉がお世話になってます」

私「こちらこそぶしつけにお邪魔してしまい、申し訳ない」

憂「いいんです。お姉ちゃんは昔からああいう感じなんで慣れてますから」ニコッ

唯「う~い~、あのギターどこにあったっけ~?」

憂「あ、それなら階段の下にあるよ」

唯「あった!・・・先輩こんな感じなんですけど、どうですか~?」










46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:25:05.47 ID:6jDkYyDc0
 平沢さんが持ってきたギターは相当長い間使われていなかったらしく
 埃が積もっていたが、そのせいもあってか堂々たる気品を醸し出してるような気がした。

唯「でもこれってただ汚いだけなんじゃ・・・」

私「確かに、このギターがそれほどビンテージとして値打ちのあるものなのか
  調べる必要がある。帰り道に楽器屋に寄って査定してもらおう」

唯「楽器屋に行くんですか?私も行く~!」

憂「おねえちゃん、また出かけるの?夕飯はどうする?」

唯「夕飯までには帰るよ~。ほんじゃ行ってきま~す」バタン

 ここまで私と行動を共にしたい平沢さんは、実は本当に私に気があるのかもしれない。
 大学3回生になってようやく薔薇色のキャンパスライフを手に入れられるという
 ささやかな希望が私の足取りを軽くした。









47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:26:53.77 ID:6jDkYyDc0
―――楽器屋にて

私「このギターを査定してほしいんですが・・・」

店員「かしこまりました。少々時間がかかりますので、その辺ほっつき歩いててください」

 どうも店員の言い方に言い知れぬ適当さを感じたが、別段腹を立てることもなく
 その辺をほっつき歩くことにした。
 平沢さんが弦やら何やらを見たいというので一緒に店内を周って見ていたとき、
 ぽつんと一人でギターを眺めている人物を発見した。

唯「あれ?明石さんじゃん」ヤッホー

明石「平沢さん、それに先輩も奇遇ですね」

私「なにか探しているのか?」

明石「ええ。師匠が古いギターを欲していまして、それもかなりの年代物なのですが
   このようなお店にはあまり置いていないようです。先輩方は楽器を買いに?」








48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:28:27.85 ID:6jDkYyDc0
私「実は私たちもその厄介事に巻き込まれてね。小津から頼まれたんだ。
  今私たちはちょうど先日手に入れたそれっぽいギターを査定してもらっている」

唯「私も元弟子として、ささやかながらお手伝いをしたのでありますっ」ビシッ

明石「そうでしたか」

 この2人と居るのは妙に落ち着くものだ。性格的には真逆の平沢さんと明石さんだが
 不思議と会話が成立する。熟りに熟れた天然ものをキレ味の良い包丁で美しくさばき、
 どことなく妖しげな得体の知れぬ調味料で味付けしたような雰囲気がこの3人の間にあった。
 その味は無類である。

 そういった危なっかしくも楽しい会話をしばらく続けていたところ、店内アナウンスが入った。

店員「査定をお待ちのお客様、お待たせいたしました」

店員「こちらのギター、買い取り価格としては100万円になります」








49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:29:54.27 ID:6jDkYyDc0
 私は一瞬我が耳を疑った。陳腐な表現を使えば「口から心臓が飛び出るくらい」驚いた。
 いや、実際はそんなに驚いていなかったが、それでも100万円という法外な値段を
 すぐには受け入れることができなかった。

明石「いったいどのような根拠があって100万円になるのか、ご説明いただけないでしょうか」

 口をパクパクさせる私をよそに、しばらくして明石さんが冷静沈着に口を開いた。

店員「はい、このギターは~うんぬんかんぬん~ということなので、この値段になります」

店員「よろしければ買い取りとさせていただきますが、いかがなさいますか?」

唯「ひゃ、ひゃくまん・・・」ポカーン








50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:31:05.24 ID:6jDkYyDc0
 私はその膨大な金額を前に前頭葉がまともに働かなくなっていたが、ただ一つ分かっていることがあった。
 このギターを小津やその師匠に渡すのはまさしく豚に真珠、猫に小判であり
 真にこのギターの価値を存分に社会に役立て、有益なものとすることができるのは私である。
 そのことに一片の疑いを持たなかった私は即、ギターを売り払った。

明石「いいんですか?」

私「考えてもみたまえよ。小津や師匠にこのギターを譲ってもどうせロクなことには使われまい」

明石「まあ、そのギターは先輩のものですから私は何も言うことはないです」

唯「ねぇ先パ~イ?」チラチラ

私「はっはっはっ、心配するな平沢さん。これは君たちの協力によるものだからな。
  放課後ティータイムのみんなで分けようじゃあないか」

唯「やっほ~い!先輩大好き~」キラキラ

私「hahahaha!」

 その時、私の目の前にあるものすべてが薔薇色のキャンパスライフへと続いていると考えていたのは
 もはや手の施しようのない阿呆としか言いようがない。








51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:32:49.29 ID:6jDkYyDc0
 私たちはとりあえず近くの喫茶店に入り、100万円の使い道について作戦を練ることにした。

私「それぞれの取り分だが、私が50万で平沢さんたちに50万でいいだろう」

唯「え~!なんで先輩だけそんな多いんですか~?」

私「私が発案しなければそもそもあのギターは手に入らなかったし、平沢さんたちも50万あれば
  一人10万円も取り分がある。そうだろう?」

唯「そっかぁ~!一人10万かぁ・・」グフフ

明石「平沢さんが良ければそれでいいんじゃないですか?
   騙されているような気がしないでもないですが・・・」

私「何か言ったかね?」

 今まで私の中でなりを潜めていた尊大さが少しずつ肥大化していくのを自分でも感じていたが、
 すでに私を引き留めるものは何もなかった。








52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:33:55.11 ID:6jDkYyDc0
 そのあと私は平沢さんと別れ、明石さんと帰路についた。

明石「先輩はその50万で何を買うつもりなんですか?」

私「今のところ特に欲しいものはないが、50万あればしばらく生活に困ることはあるまい。
  私は質素に暮らすのが好きだからな」

 実は豪遊する気マンマンである。

明石「私は師匠への貢物をまだ探さなくてはなりません。師匠が飽きるまで何とか頑張ってみます。
   それではこの辺で失礼します」ペコリ

 日も暮れ、50万円という大金を懐に抱えながら1人で歩くというのは予想以上に緊張するものである。
 自分の部屋に着いてしばらくしても、誰かに見られているようで気が休まらなかった。
 私が生来のチキンハートであることを素直に告白しておこう。








53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:35:21.35 ID:6jDkYyDc0
 50万を誰にも見つからないように用心深く部屋に隠した後、私はおもむろにノートを広げ
 大金の使い道をニヤニヤしながらリストに挙げた。
 来たる薔薇色のキャンパスライフへの布石を打つべく、私はまず麗しの乙女との健全な交際を
 目標に掲げた。その為には50万円を使い切るのも辞さない覚悟であった。
 とにかく異性と交際さえしていれば全てが万事うまくいくと考えていたのは
 後から考えてみれば阿保の極みであり、結局のところ私の脳は私自身の下半身に
 いいように支配されていたのである。

 そんなこんなで熱心に机にしがみついているうちに私はウトウトと眠ってしまった。
 その日の夢に出てきたのは清楚な顔立ちをした黒髪の乙女ではなく、明石さんであった。
 翌日、目が覚めると夢の内容のほとんどを忘れてしまっていた。








54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:36:39.02 ID:6jDkYyDc0
 学校から帰り、部屋でくつろいでいるとまたもや小津が訪ねてきた。
 
小津「帰ってくるなり部屋でごろごろするなんて、いい身分ですなぁ」

私「またお前か。何の用だ」

 私は子供を守る野生動物さながらに警戒心をあらわにした。

小津「おお怖い怖い。そんな睨まないでください」

小津「例のギターは明石さんが手に入れてきてくれましたよ。
   ・・・おや、あなたにしては珍しく勉強でもしてたんですか?」

 私としたことが、机の上に昨晩のノートを広げたままにしてしまった。
 バタバタと慌ただしくノートをしまいながら小津を部屋から放り出した。

私「なんでもない。用がないなら帰れ」









55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:38:16.34 ID:6jDkYyDc0
 50万を手に入れてから1週間たっても私は一切手をつけようとしなかった。
 私の理想とする異性はもっとこう、ふはふはして、繊細微妙で夢のような、
 美しいものだけで頭がいっぱいな黒髪の乙女であったが、よくよく考えてみると
 まずそのような女性との出会いがなかった。
 ここ1週間で私の頭を支配していたのは平沢さんであった。

 そしてある日、大学の講義を終えて意気揚々と部屋に帰り
 いつも通り50万円を隠してある場所を確認した。

私「・・・・・・・・・・・・!?」

 無い。
 丸々無くなっている。








56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:40:11.35 ID:6jDkYyDc0
 私は混乱した。学校に行っている間にまさか盗まれたのか。
 しかし部屋はそれ以外は何も変化がない。
 わざわざ隠してある50万だけを盗んでいくのは、この部屋をよく知る者にしか
 できない。しばらくして私は確信した。
 小津の仕業である。

 といっても小津の所在は現在不明であり、携帯で問いただしたとしても
 しらを切られるのがおちである。
 私はふつふつと湧いてくる怒りを鎮めながら考えた。
 
私「・・・とりあえず師匠とかいう人の部屋で待ち伏せしてみよう」









57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:41:24.14 ID:6jDkYyDc0
 私は初めて師匠の部屋の入口を見た。なにやら雑多なものがドアの辺りにひしめいている。
 物陰にて小津が来ないかどうか隠れて見張っていると、都合のいいことにさっそく小津がやってきた。
 その場でとっ捕まえて尋問しようとしたが、まだ小津が犯人だと決まったわけではない。
 私は冷静になり、小津が師匠の部屋に入るのを確認した後、会話を盗み聞きした。

小津「師匠が欲しがってた亀の子束子、とうとう手に入れました」

師匠「おお。これがどんな汚れも落とせるという亀の子束子か。貴君、これをどこで手に入れた?」

小津「明石さんが商店街を練り歩いて情報をつかんでくれました。
   少々値は張りましたけど、僕の秘密の財源をもってすれば買うのは容易です」

 その秘密の財源が私の50万に違いない。
 得意げに語る小津に心底腹が立ち、我慢できなくなった私はとうとう部屋に押し入った。








58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:42:48.02 ID:6jDkYyDc0
 突然私が部屋のドアを思いっきり蹴破ったものだから、さぞ驚いただろうと思いきや
 小津と師匠は飛び上がることもなく、あちゃ、という顔をしただけであった。

私「小津。おまえ、その秘密の財源ってのはなんだ」

小津「ばれちゃいましたか」

 私が憤怒の形相で襲いかかろうとしたその時、突然ものすごい力で両腕をつかまれ
 貧弱な私の体は無惨にも地面に押し倒された。

小津「今や『図書館警察』と『自転車にこやか整理軍』のトップを務める僕に
   生身で危害を加えようとするなんて、無謀意外の何物でもない」

 いつの間にか『自転車にこやか整理軍』の屈強な男たちが私を取り囲んでいた。

私「なぜ私の金を盗んだ!」









60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:43:52.16 ID:6jDkYyDc0
小津「そもそも私がアナタに依頼した件ですし、どうせ50万あっても
   不埒で不純な使い方しかしないでしょう。
   なんせアナタの半分はエロで出来てますからね」

小津「じゃあ『整理軍』のみなさん、後はよろしく」

 私はなすすべもなく連れて行かれ、大学近くの池に放り投げられた。
 池から這い上がった私は寒さと絶望に打ちひしがれ、ずぶぬれのまま
 トボトボと下宿まで歩いて行った。
 街ゆく人々からの冷めた目線を感じ、寂しさで死にそうになっている時、
 ふと聞き覚えのある声がした。

澪「ねえ、あの人って唯の先輩じゃない?」









62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:45:22.50 ID:6jDkYyDc0
 それは放課後ティータイムのメンバーの秋山さんと田井中さんだった。

律「うわっ先輩、めっちゃ濡れてんじゃん!」

澪「風邪ひいちゃいますよ!どうしたんですか?」

 こんな情けない姿を見られ、私は恥ずかしさでまた死にたくなったが
 心配してくれることがまた何より嬉しかった。
 
 秋山さんが持って来てくれたタオルで体を乾かした後、事情を説明すると
 二人とも私に代わって私以上に怒ってくれた。

澪「小津さんといえど今回はやりすぎだよ!」

律「こりゃあ天罰を与えてやらんといけないな・・」








63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:46:25.89 ID:6jDkYyDc0
律「よし、とりあえず全員集合だな」

 プルルr

律『・・・もしもし唯、突然だけど・・・うん、よろしく』

澪「ムギと梓も来れるってさ」

律「先輩、今から唯んち行くんで来てください」

 私はうまく話が呑み込めなかったが、とりあえずついて行った。









64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:47:39.55 ID:6jDkYyDc0
 私は平沢さんの家でメンバーのみんなに全てを話した。

唯「ええ!?先輩の50万盗られちゃったの!?」

梓「しかも開き直って先輩に危害を加えるなんて・・・
  サイテーです」

澪「ていうか唯、あのギターがそんなに高かったなんて初耳だぞ」

律「今の話からすると残りの50万は私たちで分けるんじゃなかったのか?」

唯「えっ。あ、忘れてた」テヘッ

澪(こっちはこっちでたちが悪いな)

憂(うふふ、おねぇちゃんったらカワイイ)

紬「そんな悪い人がこの世にいるなんて・・・復讐するしかないわ」キラキラ

梓(ムギ先輩なんか楽しそう・・・)








65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:49:05.19 ID:6jDkYyDc0
私「確かに小津に復讐したい気持ちはあるのだが、相手が悪い。
  『図書館警察』は私の大学だけでなく日本の半分の情報を網羅しているという噂もあるし、
  『整理軍』はもはや小津の手駒だ。うかつに手を出したらそれこそひねりつぶされるだろう」

澪(どんだけ規模がでかいんだよ)

紬「小津さんは実質大学の頂点に君臨しているわけね」

梓「そんな人に攻め入る隙なんてあるんですか?」

律「小津さんの弱点とかあればこっちにも分があるかもしれないけど」

唯「私も小津先輩のことは少し知ってるけど、あの人自分のことは
  全然しゃべらないの」

私「小津の弱点か・・・明石さんなら何か知っているかもしれない」










67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:50:10.32 ID:6jDkYyDc0
唯「確かに明石さんなら何か知ってるかも!」

律「味方は多い方がいいからな。唯はその明石さんって人に連絡してくれ」

唯「ラジャ!」ビシッ

 この奇妙なチームワークの良さはバンドで培ったものだろう。
 今回は使い方がだいぶ間違っているが、そこは目をつぶることにした。

唯「もしもし明石さん?今何やってるの?」

明石『来週に試験があるので勉強を少々』

唯「えっ、来週ってもう試験なの!?私何もやってないや」

明石『落としたら留年ですから、今のうちにやっておいた方がいいかと』

唯「そっかぁ~。ありがと!じゃあね!」ピッ








68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:51:18.55 ID:6jDkYyDc0
澪「っておい!」

唯「あっ忘れてた!もっかいかけ直そ」ピッピッ

梓「唯先輩ほんと変わらないですね」

憂(やっぱりおねえちゃんカワイイ///)

明石『どうしたんですか』

唯「あのね~、明石さんって小津先輩の苦手なものとか知ってる?」

明石『苦手なものですか。そういえば聞いたことないですね』

唯「そっかぁ」シュン

明石『何かあったんですか?』

唯「うん。実はかくかくしかじかで・・・」








69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:52:18.95 ID:6jDkYyDc0
明石『小津先輩がそんなことを・・・
   どうやら越えてはいけない一線を越えてしまったようですね』

明石『私も協力しましょう。何か分かったらまた連絡します。では』ピッ

唯「明石さんも協力してくれるって♪」

梓「頼りになりますね」

澪「いま私たちに出来ることはもうないな」

律「ていうか具体的にどう復讐するのさ」

私「ヤツを今の地位から引きずり降ろすほかないだろう。
  一発殴ってやりたいが、暴力に訴えるのは好かん」

梓「となるとやっぱり情報が必要ですね」









70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:53:46.21 ID:6jDkYyDc0
 ♪アーアーカーミサーマオネーガイ・・♪

唯「あっ、明石さんからメールだ!なになに・・・
 『どうやら小津さんには彼女がいるらしいです』だってさ」

私「なに!あいつめ、よくもぬけぬけと」

紬「そんな悪いことをする人に彼女が居るなんて信じられないわ」

私「おまけに容姿も魅力的な要素なんてかけらもないくせに、
  その彼女もよく付き合ったものだ」

律「確かになんで付き合ってるんだろ」

梓「私たち結構ひどいこといってませんか」









71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:55:06.90 ID:6jDkYyDc0
澪「小津さんの権力に惹かれたんじゃないか?」

唯「どういうこと?」

澪「組織のトップで、しかもその組織はいろいろな方面で力をもってる。
  好き放題に動かせるならなんでもできるんじゃないかな。
  彼女はそれを利用したかったとか?」

私「なるほど」

梓「その組織って何なのか私たち全然知らないですよね」

唯「その調査も明石さんに頼んでみよっか?」

私「いや、今度は明石さんの身に危険が迫ってしまう」

紬「あの~。親の会社の情報部なら何か調べられるかも・・」

律「それじゃあムギは家に連絡してみてくれ」

紬「らじゃ!」ビシッ









72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:56:18.30 ID:6jDkYyDc0
紬「もしもし斎藤?ちょっとお願いがあるんだけど・・・」

私(斎藤って?)

律(ムギんちの執事だよ)

 琴吹さんの家はどれだけお金持ちなのだろうか。
 四畳半の世界で全てが事足りた私にとって、どうも執事というのが
 ピンとこなかった。

紬「・・・そう、分かったわ。じゃあお願いね」ピッ

律「なんだって?」

紬「もう調べたから、今からメールで送るって」

澪(はやっ)








73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:57:39.23 ID:6jDkYyDc0
 ♪ヤバーイトマラナイー・・♪

紬「来たわ」ピッ

唯「なんて書いてあるの~?」

紬「えっとね
 『図書館警察や整理軍は福猫飯店という大きな組織の
  下部組織に過ぎず、その代表である印刷所の所長が組織全体の
  最高指揮官である。図書館警察は返却期間切れの図書の強制回収を担い、
  自転車にこやか整理軍はキャンパス内の自転車をひたすら整理することに
  奉仕するが、長い歴史の中でそれぞれの組織の実態は変わっていき、
  今や大学を裏で牛耳る巨大な組織へと拡大していった。
  しかし代々この組織の所長は権力を悪用することなく、キャンパスの
  秩序を守ることを組織全体の暗黙のルールとした』
  だって」

澪「長い、三行で」

梓「おそらく小津さんは所長で、大学を裏で牛耳ってきたんですね」

律「でも秩序を守るって書いてあるぞ」








74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 11:58:55.01 ID:6jDkYyDc0
私「カオスを具現化したような奴にそんな大それた役が務まるのか?
  あいつはむしろ人の不幸を喜ぶような奴だ。正義の味方なわけがない」

梓「なにか裏がありそうですね」

唯「う~ん・・・あ、メールだ」♪フワフワターイムッ

唯「明石さんからだ。なになに・・・
 『印刷所の上層部の人から聞いたのですが、どうやら小津さんは
  私的に組織を動かしているらしく、評判がよくありません。
  他の下部組織に噂を広めれば小津先輩も失脚するかもしれません』
  だって!!」

私「なに!明石さんはそこまで調べてくれていたのか」

唯「あとね、『それから、私がいろいろ調べて周っていることが
  小津先輩の耳に入っているようです。私も既に捕えられました。
  平沢さんたちも追手に気を付けてください』
  とのことです」

私「な、なんだってー!」








75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 12:00:21.81 ID:6jDkYyDc0
律「バカ、それを早く言え!」

澪「ど、どうしよう。追手だって」オロオロ

紬「澪ちゃん落ち着いて。私たちのことはたぶん漏れてないはずよ」

梓「それより唯先輩たちのほうが危ないんじゃないですか?」

私「私は明石さんを助けに行く!
  それから平沢さんは家にいた方がいいだろう。
  さすがの小津たちも家に押し入ることはないはずだ」

唯「了解です!でも助けに行くっていっても場所とか分かるんですか?」

私「だいたい見当はつく」

 私はすぐに家を飛び出し、明石さんを助けるべく薄暗くなってきた
 町を走って行った。
 正直なところ全く見当もつかなかったのでとりあえず大学に向かうことにした。
 格好つけだけで安易な事をするものではないということを後で思い知ることになる。









76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 12:01:39.20 ID:6jDkYyDc0
唯「先輩行っちゃったね」

憂「安心してお姉ちゃん!お姉ちゃんは私が守るから!」

紬「憂ちゃんが居れば大丈夫そうね」

梓「むしろ追手の人たちが心配です」

律「なあ、さっきの明石さんからのメールだけど
  要するに今起きたことを組織にばらせばいいんじゃないか?」

澪「そうだな。それなら私たちにも出来そうだ」

梓「でもどうやってばらすんですか?」

唯「あっそうだ!」ピコーン









77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 12:02:44.33 ID:6jDkYyDc0
唯「師匠ならなんとかしてくれるかも!」

澪「師匠って、小津の師匠だろ?小津の味方なんじゃないか?」

唯「師匠は誰の味方でもないよ。さすがに今回の小津先輩の悪行には
  なにか言うと思う」

律「でもお前、破門されてるんじゃないのか?」

唯「あ、そうだった・・・でも行ってみる価値はあるよ!」

紬「行くっていっても、外は追手が居るかもしれないのよ?」

唯「憂がいれば安全だよ!ね?憂」

憂「任せておねえちゃん!」

澪(意味がわからない)









78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 12:04:02.11 ID:6jDkYyDc0
 平沢さんたちが師匠のもとへ向かおうとしていたその時、私はというと
 明石さんと一緒に見知らぬ部屋に監禁されていた。
 
 意気揚々と正義のヒーローを気取りながら大学へ行く途中、突然道行く人に
 捕まえられ、目隠しをされ連れて行かれた。まさか一般人のふりをしているとは思わなかった。
 
明石「忠告したのになぜおめおめと捕まっているんですか」

私「・・・・すまない」

明石「もしかしたら小津先輩は本当にこの大学を乗っ取るつもりかもしれません。
   さきほど整理軍の人たちが話していたのですが、小津先輩は宗教サークル『ふわふわ』も
   手中におさめたようです」

 「ふわふわ」が宗教サークルだったことも驚いたが、このままだと小津がすぐにでも
 この大学を乗っ取ってしまうと思い、私は焦った。

私「頼みの綱は平沢さんたちか・・・」








79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 12:05:09.74 ID:6jDkYyDc0
唯「大丈夫?誰かいる?」

律「外はいまのところ人の気配はないぞ」

唯「よーし、じゃあみんな、ちょっと行ってくるね!」

紬「気をつけてね」

澪「あんまりムチャするなよ」

憂「お姉ちゃん待って~」

梓「憂、それ何・・・?」

憂「襲われたらこれで再起不能にしようと思って♪」

憂「じゃあ行ってきます!」










81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 12:07:24.91 ID:6jDkYyDc0
唯「とりあえず大学の近くまで行かないといけないから、バスに乗ろっか」

憂「けっこう暗くなってきたから気をつけないとね」

――バス到着

憂「!!お姉ちゃん隠れて!」ガバッ

唯「ほえ?」

憂「・・・ほら、あの人たちがさっき先輩の言ってた整理軍じゃない?」

唯「すごい強そうだね~。しかもたくさん降りてきてる」

憂「1人2人なら私のコレでなんとかなるけど、あんなに多いと逃げ切れないかも・・・」

憂「おねえちゃん、しょうがないから歩いて行こ?」

唯「えぇ~面倒臭い~」








82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 12:08:47.23 ID:6jDkYyDc0
澪「唯たち大丈夫かな・・・」

紬「今のところ大丈夫みたいよ」

律「なんで分かるんだ?」

紬「二人に発信器を付けておいたの。何をしてるのかだいたい分かるわ♪」

梓「すごい、携帯で見れますよ、これ」

澪(いつの間に・・・)

紬「探偵ごっこが昔から夢だったの~」

律(おそろしい子・・・!)








83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 12:10:13.88 ID:6jDkYyDc0
紬「あ、二人とも歩いて行くのかしら」

澪「バスには乗らないのか?」

律「まさかもう追手がまわってきたのか」

紬「こうなったらあの手を使いましょう♪」

 プルルル 

紬「もしもし斎藤?・・そう、お願い・・・ありがとう」ピッ

紬「車を1台唯ちゃんのところに送っておいたわ♪」

梓(最初からそれでよかったんじゃ)








84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 12:11:30.68 ID:6jDkYyDc0
憂「! お姉ちゃん下がってて!」

 キキーッ

斎藤「紬お嬢様から話は伺っております。さあ、乗ってください」

憂「その話、信じていいの?」ギロッ

斎藤「えっ」ビクッ

唯「ムギちゃんがいま車よこしてくれたってさ~」

憂「なーんだ。すいません、よろしくお願いします」

斎藤(こわ・・)









89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 13:08:05.04 ID:6jDkYyDc0
斎藤「大学まででよろしいのですか?」

唯「あ、せっかくだから師匠の下宿先までお願いします~」

斎藤「分かりました。案内してください」

 ・
 ・
 ・

 ピピーッ トマッテクダサーイ

斎藤「おや、検問かな」

憂「!! すいません斎藤さん、ここで降ろしてください!」

憂「おねえちゃん、走るよ!」

唯「待って~」








90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 13:09:12.86 ID:6jDkYyDc0
憂「こんな所でも待ち伏せていたなんて・・・ハァハァ」

?「いたぞ!捕まえろ!」

憂「おねえちゃん先に行ってて!」

唯「ほ~い」トットコ

 バッキ グシャ ドッゴーン

憂「お待たせ!」

唯「さっすが我が妹、手際がいいねぇ~」

憂「お姉ちゃんったら・・・もう///」

唯「もうすぐだよ!・・・ハァ・・ハァ」









91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 13:12:29.13 ID:6jDkYyDc0
唯「着いた!」

憂「追手も振り切ったみたいだね」

唯「ししょ~!私です!平沢唯です~!」ドンドン

 ガチャ

師匠「どうしたんだ?ずいぶん久しぶりじゃないか」

唯「師匠にお話ししたいことがあるんです!」

師匠「まあ落ち着きたまえ。せっかくだからあがっていったらどうかね」

唯「それじゃお言葉に甘えて・・・」

憂「おじゃまします」








93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 13:14:33.29 ID:6jDkYyDc0
師匠「で、なんの用かね」

唯「師匠は最近の小津先輩について何か知っていますか?」

師匠「小津か?まあ最近やたら根回しがきくようになってきて
   ずいぶんと楽しそうではあるな」

唯「実はかくかくしかじかで、小津先輩が大学を乗っ取ろうとしてるんです!
  小津先輩の悪行を組織に広めれば失脚するって聞いたんですけど、
  師匠、なんとかできませんか?」

師匠「・・・小津もそこまでやるとは、さすが私が見込んだだけのことはある。
   だがやりすぎたようだな。
   弟子を正すのは師匠の役目だ。まかせなさい」

 ゴソゴソ

師匠「唯君、すまないが携帯電話を貸してくれないか。
   ・・・よっ・・ほっ・・と」ピッピッ









94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 13:16:07.81 ID:6jDkYyDc0
師匠「もしもし、城ヶ崎か・・・そうだ、樋口だ。
   実は小津がな・・・というわけで・・・そうだ。
   そこで頼みなんだが・・そうか、分かった・・宜しく頼む」ピッ

師匠「これで小津の悪行は広く知れ渡るだろう。
   今夜、大学で小津を打ち取るらしいから見物しに行こうと思うが、
   諸君らもどうかね?」

憂「打ち取るって、殺しちゃうんですか!?」

師匠「まあそうならないように私が助けるつもりだ」

唯「そういえば明石さんと先輩どうしたんだろ?」

師匠「おや、明石君も絡んでいるのかね。なんだか楽しそうじゃあないか」

師匠「それじゃあ行こうか」








95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 13:18:26.67 ID:6jDkYyDc0
 なにやら外の方が騒がしい。監禁されてからどれほど時間がかかっただろうか。
 突然ドアが勢いよく開けられ、さわやかな好青年が飛んできて叫んだ。

城ヶ崎「助けに来たぞ!!もう安心だ!」キラーン

 私は口をポカーンと開けてただ何が起こっているのか状況がつかめないでいたが、
 助けに来てくれたということは分かった。

明石「城ヶ崎先輩!?なぜこちらに?」

城ヶ崎「ん?なんで2人しかいないんだ?女がたくさん監禁されて
    俺の助けを待っていると聞いたんだが」

師匠「やあやあ諸君。城ヶ崎、それはウソだ」

城ヶ崎「なに、ウソだと!?」

師匠「そうでもしないと君は本気で動かないだろう」










97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 13:20:47.03 ID:6jDkYyDc0
城ヶ崎「くそっ、また騙されちまった・・・
    でも俺の部下たちは今頃血眼になって小津を探しているぞ。
    大丈夫なのか?」

師匠「小津のことに関しては本当だ。奴もそろそろ懲りなくてはいかん」

明石「あの、いったい何があったんですか?」

師匠「なに、城ヶ崎のツテで小津の悪行の数々を広めたのだ。
   小津はいろいろな方面で恨みを買っているからな。
   いま大学構内ではちょっとした暴動が起きてるぞ」

 師匠と呼ばれている人物はなんだか楽しそうに事をしゃべった。
 監禁された部屋を出てやっとわかったが、そこは見慣れた体育館の使われていない更衣室であった。

明石「師匠はどうして私たちが拉致されたことをご存じなのですか」









99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 13:25:39.72 ID:6jDkYyDc0
師匠「久しぶりに唯君が訪ねて来てね。一部始終を話してくれた」

私「平沢さんが来たんですか!?今どこに!?」

師匠「唯君なら妹と一緒に小津を探しているよ。
   どれ、私たちも小津を探しに行こうか」

 どこからともなく叫び声が聞こえる。すっかり日も暮れて構内の電灯が
 ひかり始めているというのに、このざわざわした雰囲気は異様であった。

 私たちが小津を探して構内を歩いていると、学食のある棟に大きな人だかりがあった。
 すでに小津は包囲されているようだ。近寄ってみると、その黒い人々の塊から
 殺気が湯気のように噴出され、私は少し怖気づいてしまった。
 あちこちから「しね!」だの「地獄に落ちろ!」といった、もし私に向けて発せられたら
 繊細なハートを鷲掴みにされたあげく握りつぶされるような怒号が小津に浴びせられていた。
 見ると小津は2階に向かう階段の手すりで追いつめられていた。








100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 13:27:49.06 ID:6jDkYyDc0
 しかし小津はまだ誰の手にも掛けられていないようである。
 「ごめんなさいごめんなさい」といいながら殺気の塊をなだめようとしている。
 しかしそれは憤怒の鬼と化した我々の神経を逆なでするだけであった。
 人ごみの中から一人とうとう飛びかからんとした時、小津はバランスを崩し
 階段から落ちた。 地面に倒れた小津はひぃひぃと泣いている。
 
 すると私のそばで師匠がやれやれと呟くと、おもむろに宙に浮かんだ。

 私は何が起きたか分からず、というかその場にいたほぼ全員が何が起きたか分からず
 皆ただ恍惚とした表情で優雅に浮かぶ樋口師匠を見ていた。

師匠「小津、何も愛する彼女のためにそこまでする必要はないだろう。
   貴君は救い難い阿呆だな」

小津「師匠、助けてください」










101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 13:29:25.38 ID:6jDkYyDc0
 師匠は小津のそばへ何事もなかったように降り立ち、様子を見た。

師匠「しょうがないな。明石君、救急車を呼んでくれたまえ。
   おそらく折れている」

明石「すでに呼んであります」

 5分ほどして救急車が到着し、救急隊員たちはプロの名に恥じぬ手際で
 小津をくるくると毛布に包んで担架に乗せた。
 そのまま近くの池に放り込んでくれれば愉快千万であったが、救急隊員は
 怪我をした人間には分け隔てなく哀憐の情を注いでくれる立派な方々である。
 小津は彼の悪行には見合わないほどうやうやしく救急車に運び込まれた。

唯「先輩、こんなとこにいた!何やってたんですか?」

 人ごみも散り散りになったとき、私は平沢さんを見つけた。









103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 14:08:14.95 ID:6jDkYyDc0
私「平沢さんこそ、無事だったか?」

唯「私は憂が居てくれたから全然平気!」

憂「心配しましたけど、そっちの方も無事だったみたいですね。
  じゃあお姉ちゃん、私たちもそろそろ帰ろっか」

唯「そーだね!先輩も明石さんと仲良くね♪」

 これにて小津の企ては私たちの活躍により阻止された。
 思えば大学1回生の春、サークル「ほんわか」に入っていなければ
 小津とも出会わず、このような事件には関わることなどなかっただろう。
 できればあの時にもどり、大学1回生からやり直したいとも思ったが、
 そうすると今度は明石さんや放課後ティータイムのメンバーと会うことも
 なかったかもしれない。私とて過去の自分を肯定するつもりはないけれども
 今回ばかりは大目に見てやるにやぶさかでない。









104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 14:15:53.73 ID:6jDkYyDc0
 あの出来事以来、私は明石さんと親しくなった。
 私が明石さんを助けるために身の危険をかえりみず家を飛び出したことを
 平沢さんが話したらしい。結果からみれば小津の悪行が吉と出たことになる。
 私と明石さんの関係がそのあとどのような展開を見せたか、それはこの稿の主旨から
 逸脱する。したがって、そのうれし恥ずかしな妙味を逐一書くことは差し控えたい。
 成熟した恋ほど語るに値しないものはない。

 小津に関してだが、聞くと奴は彼女のために福猫飯店の所長になり、
 彼女のためにあれほどの悪行に手を染めたらしい。
 私の50万に手を出したのは許しがたいが、それも小津なりの純愛の表れであったことを察するに
 私の怒りのコブシは静かに降りた。

私「これに懲りて、人にいらんちょっかいをだすのはやめるんだな」

小津「お断りです。それ以外に僕がすべきことなんか何もないですからな」

 小津は例の妖怪めいた笑みを浮かべて、へらへらと笑った。

小津「僕なりの愛ですわい」

私「そんな汚いもん、いらんわい」

 わたしは答えた。

おわり









108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/25(金) 15:54:10.61 ID:7+t5QsFJO
おつ











この記事をリンクする?:


[ 2010/08/20 12:00 ] けいおん!SS | TB(0) | CM(2) | このエントリーを含むはてなブックマーク


成熟?成就じゃなかったっけ…
[ 2010/08/20 15:12 ] [ 編集 ]


「私」や明石さんと同じ大学ってことは、唯は京大生か…憂の教育の成果か?
[ 2010/08/20 15:30 ] [ 編集 ]
コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

yamisoku

Author:yamisoku
けいおん系SSばっかりです。


ひさびさに左上更新してみましたw


とはいえ特に書く事もありませんが(笑)


このブログも開設から1年以上経過するんですね…


とりあえず「けいおん!!」のアニメが終わるまでは頑張って更新し続けたいと思います
2010年7月24日


TOP絵、リンク&RSS、まとめ依頼、募集中!↓


このブログについて

アクセスランキング
お世話になっているサイト様
SS
戯言ニュース
ニュー速VIPコレクション
はみ出者が見てたm9(^Д^)
糞虫の館
エレファント速報WLVS
世界一かわいいよ!
SSちゃんねる
SS速報

VIP
犬速VIP@わんわんおwww
ぐる速
ヒロイモノ中毒
フライドチキンは空をとぶ
ねとねた
hyukkyyyが見る2ちゃんねる
なんでも(=´∇`=)ちゃんねる
あじゃじゃしたー
じー速

ニュース
世界って広くね(;゚Д゚)
未定なブログ
とりのまるやき
Hyper News 2ch
デジタルニューススレッド
仰天ニュース( ;゚Д゚)
危ないニュース<キ`Д´>
日本語でおk
アゲハント最高!!
心ニュース
痛ニュー速報!
そら速
事故物件.com

まとめ
やる夫.jp
ニュースレ倉庫
New discovery
Newgle

日記
侮ログ
幸か不幸か家族計画
笑ってほのぼのとして軽く泣けるはなし(と不思議話と怖い話)
ムズ痒いブログ
出逢い系ちゃんねる

アニメ・ゲーム
To LOVEる -とらぶる- 考察
ゲハ速
てるぽんFLASH!
萌えるニュース
も・え・つー☆
あみみ

動画
YouTubeニコニコ日和

画像
ヴィブロ
気まぐれブログ
ナナ速
クマ速報

18禁画像
zipでやるお( ^ω^)
がぞー速報
画像スレとらのあな
エロの向こうがわ
セクシーニュース24
エロ画像速報
萌画VIP
ピーチ速報
zipからきました
AV女優おっぱいこれくしょん

18禁動画
えろどうが~無料エロ動画~
有料アダルトサイト比較


アンテナサイト
ショボンあんてな(´・ω・`)
2chnavi
2chまとめ
ブーンあんてな
まとめアンティーナ
もきゆ(´ω`*)あんてな


にほんブログ村 ネットブログ 2ちゃんねるへ

相互RSSサイト様
【SS宝庫】みんなの暇つぶし
たん速
ドルジ速報
マジキチ速報
ニュース2ちゃんねる
茶速
テラワロスVIP
音楽業界を目指す学生

相互リンク申請中


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。
アクセスランキング ブログパーツ